|
「ああ、そうか」
彼は言う。
「店長の友達ですか?」
店長って誰だよ、おい。
君に伝えられなかった言葉達は、
僕の中で大きな山となってしまいました
「いや、すみません、てっきり…」
あせあせと、メガネの店員が謝罪してくる。
まぁ、中のほうを覗くようにきょろきょろしていたのはあたしだし。別に怒るなんてことはしない。だいたい、その扱いが不服だったわけでもないのだ。
が、何というか、その、焦りっぷりが、なんだか癪にさわる。いや、違うか。癪にさわるわけではない。勘ぐってしまうだけだ。その店長というのがどんな人物かはしらないけれど、どういう意味で、その人の友達と認識されたのだろうか、と。
目の前の人の態度を見ていると、どうやら、いい意味ではなさそうな気がするのだ。
被害妄想では、無いと思われ…
「あれ、さん?」
「あ、えーっと…ぽぷらちゃん」
「そうだよー、また来てくれたの?」
えへへ、と、笑って近付いてくる様は大層可愛らしい。
小学生だと言われても納得できてしまえそうな彼女は、高校生らしいのだが、やっぱり、そんな風には見えない。だって、中身まで可愛いんだ、このこ。
「んー、今日は待ち合わせでね」
「お友達もくるの?」
「友達…なのかなー…?」
待ち合わせは、バンドのメンバーだ。この店でサトウちゃんが働いているって話しをしたら、「一度からかいにいこうぜ!」と馬鹿湯浅が言い出して、「何でメンバーで行く必要があるんよ…」あまり乗り気じゃなかったあたしの意見との間をとって、「それなら、明日の待ち合わせそこでするか」と楠木が妥協策を提案したのだ。ちなみに、待ち合わせて向かうのは、湯浅のじーちゃんが毎年やってるイベントで、「お年寄りのお年寄りによるバンド祭り」みたいなんだ。じーさんは、どうやら孫自慢がしたいらしく、湯浅はうちのバンドとしてじゃなくとも、第一回から毎年出ているらしい。
つーか、メンバーは、友達? え、仲間? いやー、仲間ってのは間違いでは無いんだろうけど、なんかその呼び方はしたくない。
ううん、と首を捻っていると、同じように、ぽぷらちゃんもわからないといったように頭を傾けていた。それが可愛くて、つい、頭をなでる。
いいこ、いいこ。
其れに対しての反応が無いところを見れば、撫でられるのに慣れているのかもしれない。
そりゃ、これだけかわいかったら、きっとみんなつい手が伸びちゃっても仕方がないと思う。
「やっぱり…」
「ん?」
ボソリ、聞こえないように呟いたのか、それとも思わず呟いたのか。
メガネの少年が小さく零したのをしっかりと拾ってしまったあたしは、何がだ、と、振り返る。
「本当に店長の関係者じゃないんですか?」
「…いや、あたし、おたくらの店長が誰かすら知らんし」
「カタナシくん、さんはサトーさんの友達なんだよ」
「あー」
え、待って、そこ納得されてもあんまり嬉しくない。サトウちゃんとの共通点なんて、髪の毛の色ぐらいだと思うんですけど…
手をぽん、とやって、納得してみせる人に、軽くショックを受けている間にも、二人の会話はすすむ。
「どうして店長の知り合いだって思ったの?」
「いや………なんとなく」
「そっかぁ」
それで納得しちゃうんだ、ぽぷらちゃん…
そして、メガネ。なんかその間、気になるから。おまえ、若ければ何でも許されると思うなよ?
喉まででかかった言葉を押さえる。いくらなんでも、初対面の相手に言うことはできない。
目の前の彼は少年なればこそ、あたしはすでに成人しているのだ。
って、だめじゃんこれ、若いから許してるよ…
「さん? どうかした?」
「んー…いや、何でも無いよ」
「あ、そうだ、ご注文は?」
とるの遅い…、と思わないでもないけれど、話しこんでいたのだから、まぁ、しょうがない、と思って「パフェひとつ」頼めば、
「本当に店長の知り…」
「しつけーよ、メガネ」
再度、同じような言葉を吐こうとする。どうしてもあたしと、その店長に関わりを持たせたいらしいメガネの台詞を、にっこり笑って遮れば、なんとも微妙な顔をして「かしこまりました、少々お待ちください」とマニュアル道理の台詞をのこして、「あたしがつくってくるね!」と張り切るぽぷらちゃんと一緒に去っていった。
「ああ、だめだな、あたし、大人げない…」
背が高くとも如何見ても自分より年下だろう少年にたいして…
呟いたそれは、誰に拾われることもなく宙に浮いた。
っていうか、どうせなら、全部思ったこと言っちまえばよかったんだ…
気付いたんは、パフェが届いてしばらくしてから、待ち合わせの時刻まで、後、5分のときだった。
「言いだしっぺのくせに、遅い!」
「あはは! ごめーん」
「おまえ、ちょっとは反省しろ…」
(
題:赤橙
/
画:MICROBIZ
)
2007.11.13
|