「手をね、」 「うん…?」 広げた自身の手をじぃっと見つめて、少女はぽつりと呟くように言葉を落とした。 その手の向う側に、優しい声で相槌をくれた彼がいることがわからなかったわけでは無い。けれど、彼女の節目がちな視線は、彼女自身の小さな掌へと注がれている。 「手を、精一杯伸ばしたって、どうせ届かないのなら、最初っからしないほうがいいって、思ってたんです。」 自嘲、だったのだろう。彼女は少しだけ口角を持ち上げると、ゆっくりと確かめるように指をおって、拳をつくった。 「そうだねぇ…」 青年は、テーブルを挟んだ正面に座って、ただ優しい声で相槌を返す。 「頑張って失敗したほうが、悲しいじゃないですか」 「うん」 「それなら最初っから何もしなければいいんだって、思ってたんです」 「うん」 「…っのに」 「うん」 少女の言葉が、詰まる。それでも、青年はただただ、優しい声で相槌を打った。 「貴方のせいですよ」 少女は、今度こそ本当に、呟いた。拳を開くと同時に、下ろす。けれど視線は、彼ではなくテーブルの木目へと注がれていた。 「うん、ごめんね」 青年の優しい声に、少女は勢いよく顔を上げた。眉根を寄せて微笑う人を見て、少女は顔を歪める。 「…んで、謝っ」 今にも溢れそうだった滴が、其の勢いで、ころりと転がり落ちた。観念したかのように、それに続いて、ころころと透明が落ちていく。 「…相馬、さんの、せい、じゃ、ない、に、」 「うん、ごめん」 酷く優しい彼の声に、少女は縋るように、搾り出すように、掠れた声を紡いだ。 「…っきです」 「うん」 彼の答えに、少女は、少しだけ、笑う。 「うんじゃ、ないっすよ」 「そうだね、ありがとう」 ( ご め ん ね 。)
title by 赤橙
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