たまたま入ったファミレスで、見たことある顔に目を見開く。
 フロア用ではなく、厨房用だろう、店の制服を着こなしているところを見れば、どうやら、働いているのだろうことはわかったのだが。
 奥の人間が、どうして、フロア側まで出てきているんだ…
 尚且つ、なんか、小さな女の子をいじめているように見えるんですけど…



「サトウちゃんよ、やめたりや」
「あ?」



 左の目を隠すように前髪を垂らして無表情なりにも顔を顰めて振り向いたのは、間違いようもなく、どっから如何見ても自身の知り合いであるあの佐藤潤だった。



「…何でいんだ?」
「客だろーが、どっからどう見てもよ」



 間を開けての、そのテンポの遅い質問に苦笑を返せば、隣の小さな女の子が、興味津々、といった目をこちらに向けてくる。
 よく見たら、サトウちゃんとは別の制服を着ている、つまり、フロア用の。



「相変わらず口が悪ぃな、お前」
「家系や、気にしな。女の子苛めるとはいい趣味だね、佐藤くん?」
「…これ?」



 顔を斜めに傾けて見せると、その女の子を指さす。
 指されたほうはといえば、「これって何ですかー!」と、両手をあげて、なんだか、小さな子供のような怒り方をする。音にするなら、ぷんぷん、だとか似合いそうだ。
 しかし、その二人のやりとりを見ていると、女の子のほうはどうだか知らないが、サトウちゃんのほうは、どうやら、楽しんでいるらしいことがわかる。彼なりに可愛がっているんだろう、…たぶん。



「あんた、変わりませんね、ほんと」
さんには負けますよ、ほんと」
「…そりゃどうも」



 ああ言えばこう言う、が似合いすぎる人が今まさに目の前に。
 無表情なのが更にこう…腹にきます。ふつふつとね。



「サトウちゃん此処で働いとるの?」
「この格好で店員じゃなけりゃ、変人だな」
「安心しな、その格好でも変人じゃなくはない」



 あんたんとこのバンドメンバー、あんたを含めて全員変人属性でしょう。
 口には出さずに、笑顔にこめる。伝わったのか、伝わってないのか、無表情は変わらずだ。



「で、そちらの、お嬢さんも?」
「あ、まだいたのか」
「フロア担当だから当たり前だもん!」
「…」



 なみだ目になっての講義。さっきから思ってたんだけど、可愛らしい。
 なんだろう、あれだ…このこ本当に店員さん…?
 バイト規定年齢超えて無いんじゃ… 



「えっと、種島ぽぷら17歳です!」



 マジですか…!
 見えない、17には見えない…! こんな愛くるしい高校生がいてもいいんですか神様!?



、手出すなよ?」
「ブハっ! な、あんた、あたしを何だと思ってんですか!」
「お前女から人気あるし」
「あたしから手ぇ出したこた無いわ!」



 だいたい、女のあたしが女にモテてどうしろってーの。男が好きですよ、男が!  だいたい、あたしなんてあの子たちからしたら、彼氏が居ない故の楽しみとしての偶像みたいなもんだよ、知らんけど!



「待て、何で今鼻で笑った、サトウ…」
「いやー、あまりにもさんが可愛すぎてー」
「棒読みで、ざーとらしいこと言ってんじゃねぇよ、この片目」
「あ、あの…」
「あ…」



 胸倉掴んで詰め寄ったのが悪かったのか、種島ちゃんがはわはわ、慌てた様子で、なみだ目になっている。
 対してその掴まれていた方は飄々としたものなのだけれど、慌てて、手を放して、種島ちゃんに向き直った。



「あー、別にケンカじゃ無いんよ、これ。」
「え、そうなの?」



 言えば、少し安心したように見上げてくる。もう一度言おう、本当に17歳!? めっさ可愛いんですけど、この人ー!



「えー、と、です。こいつとタメで、一応、音楽仲間的な感じで、付き合い長くて、まぁ、ほら、じゃれあい見たいなもんなんで、ごめんね、驚かせて?」



 安心させるように笑えば、「そっか、よかった」ふんわり、女の子らしい笑顔が返る。それに自分も安心していれば、



「そうやって、女に色目使うからダメなんだよ、お前」



 背後から偉く気に食わない台詞が掛かったけれど、目の前の彼女に免じて聞こえないフリをしてやった。



それでも君への想いは心の中降り積もるように、
色目なんかつかって無いし、ちくしょう…!)    
( 題:赤橙 / 画:MICROBIZ

2007.11.10