「あ、おかえりなさい」 「…は?」 自分の部屋のドアを開けると、そこには見知った顔が笑顔を作っていた。 バタン、かちゃり あ、今、なんか、ってば幻覚見ちゃったかも、テヘ☆ 即座に鍵まで閉めたドアの前、一人コツンと頭を叩いて舌を出した。 勿論、突っ込みを入れてくれる人等誰もいないかったけれど、むなしさをかみ締めるよりも先に、まず必要なのは深呼吸だ。 すー… はぁー… よしっ! きっと疲れているから見たのであろう幻覚も、次にドアを開けたときには、綺麗さっぱり消えているはずだ。戻って来い、自分! ほら、ちゃんと、幻覚だってわかってるからもう大丈夫! ぐっと息を止めて、再度、鍵穴へと鍵をねじ込む。ドアノブに手をかけてそっと開ければ 「ひどいなぁ、どうして閉めるの」 「…何でいるの、相馬くん」 この場合、それで良かったのか悪かったのかはわからないけれど、幻覚でなかったらしいその人が、変わらずの笑顔で出迎えてくれた。 というか、君のほうが酷いから。そりゃもういろんな意味で。 私の心の中の葛藤を知ってか知らずか、彼はにこっと笑って首を傾げる。 「管理人さんが快く上げてくれたよ?」 「……何言ったのよ」 どうせまたロクでも無い脅し文句でも言ったのだろうと思って問えば 「近々籍入れますって」 「ちょっと!」 本当にロクでもなかった…! そういう嘘を吐くにしたって、せめて、弟ですとかいう類の、血縁者でしょう! しかも、いくら彼が人を食うような人だからって、それはないでしょ、いろいろないでしょ、管理人さん、信じないでよ! 「え、だって嘘は言ってないでしょ?」 「真実が何処にも無い!」 どうして、この必死の抗議にたいして、「またまたぁ」で済ませるんでしょうかね、この子は、本当に! 「まぁ、立ち話もなんだから、あがりなよ」 「あたしん家よ」 「じゃあ俺の家でもあるね」 「あたしん家なの」 「じゃあ二人のだ」 「あたしん家だってば!」 「さん、それ以外いえなくなった?」 「あなたね…」 「あ、なんかそれ新婚みたいだね」 あ、疲れる…どうしよう、この子… わぁ、と喜んでしまった相手に、脱力。諦め半分の泣きたい気持ちで家に入れば、ふわり、いい香りが鼻をくすぐる。 「…これ」 「ん? さんシチュー好きなんだよね?」 「好き、だ、けど…」 テープルの上には、あったかいご飯が用意されていた。しかも私の好物のシチューが。 しかもしかも、なんか、部屋ちょっと片付いてるんですけど。そりゃあ、最近掃除したとこだから前よりはマシだったはずだ。でも女の部屋としてはどうよそれ、と問いたくなるような部屋であったはずなんですけど。 「まぁ、食べてよ」 おいしいから、と、スプーンを渡され、促されるまま口にしたそれは… 「っおいしい…」 めちゃくちゃ美味しいというオプション付きでした。 そう言えば、彼はファミレスだか何だかでバイトしていると言っていたような気がする。ファミレスってレンジでチンとか焼くだけ簡単だと思ってたんだけど、もしかしてちゃんと作るんだろうか。 料理を作った人を見る。彼はやっぱり笑顔で、少しだけ首を傾けた。 「旦那に欲しくなったでしょ」 バカらしいその質問。危うく「嫁には欲しいかも」なんて言いかけて、寸でのところで止めた。 なんか、言ってしまったが最後、彼は本当にきてしまいそうで恐い。 「で、籍はいついれよっか?」 「も、ちょ、いい加減にしてください、マジで」
ハローハロー?未来の僕たちへ
(健康管理なら俺がしてあげるのに) 「なんと、三食掃除付き!」 「う…じ、自分でできるわよ」 「はい、嘘」 「…」 |