ただ、珍しいな、と思った。 みんなが言うほどその子に、大して興味を持たなかったけれど、安仁屋をフる女の子というのが、この年代でもいるのだなぁ、とそれぐらいのものだった。 人間全てがそうやって人を判断するとは全く思わないけれど、顔が良くて、運動神経がよくて、性格だって、興味のある人間に対して悪いなんていうことは無いだろうに、そういう人間をフるというのは、やっぱり珍しいことだと思う。 現に、安仁屋はモテているし、その彼女以外に断られたなんて話は今まで聞いたことがない。 まぁ、だからといって、特別に興味をそそるような内容でもなくて、根掘り葉掘り聞き出そうとしているソレにも、いつもの如く右から左に聞き流していたのだ。けれど、 「そりゃー、そのちゃんってのはまともな子だったんだな」 ぎゃはは、とお世辞にも上品とはいえない笑い声が響く。 いや、このさい笑い声なんかはどうでもいいのだ。気になったのは、その彼女の名前、だ。 、なんて、他にいても別に可笑しくない名前。だけど、浮んだのは、自身の幼馴染である、彼女の。 いやいや、まさかと、否定してみても、自然と耳はその話を拾うようになる。 「で、何処のクラスなんだよ」 「あ、なんだよ、言えよ、お前」 「いやー、俺も興味あるよ、お前をフるほどまともな子だろ?」 ここぞとばかりに詰め寄っているらしいそれは、まさに、彼ららしいとは思う。 だけど、だからこそ、安仁屋もかたくなに口を開かない。 「何だ? なら、隣のクラスだろう」 トイレから帰ってきた平っちが話に加わったなら、単純な面々はそれを信じ込んでばっと振り返る。そしてやっぱり単純だったのだろう安仁屋は、口にはしなかったとしても、十分に態度で、如何して知っているのだ、といわんばかりに立ち上がってみせたのだ。 そして、隣のクラスにといえば、一人しかいない。 「なんで平塚が知ってんだよ」 「お前らいつからそんな仲良くなってんの?」 「今岡とは、中学からの付き合いだが…?」 「…今岡?」 今度は一斉に、俺へと視線が注がれる。 「どういうことだ?」 「何がだ?」 疑問を口にしたのは今まで然程発言をしていなかった岡田で、答えたのは平っち。 けれど、俺に問い掛けていたのは明白で、「お前はいいんだよ」と、若菜の声で平っちの回答権はなくなった。 「あー…なら、家近所だけど」 「幼馴染だろ」 「…」 せっかく遠まわしに言ったのに、平っちがあっさりと言ってのける。 別に疚しいことがあるわけじゃ無いとはいえ、この状況でそういうことは正直言わないで欲しいのだけれど、それを彼に望むのはあまりにも難しいことなのだろうか…。 諦めて溜息をつけば、一拍置いて理解したらしい彼らが「マジか」「見せろ」と騒ぎ出す。 見たければ勝手にいってくればいいと思う。 幼馴染というのは、別に所有しているわけでもなければ、所有されているわけでもない。 「マジかよ…」 どうやら知らなかったらしい安仁屋の呟きが喧騒の間に聞こえて、それはこっちの台詞だと心の中呟いた。 あぁ、でもたしかに。 なら、安仁屋を振ったのも頷けるのだ。 窓の外には何処までも青い空が広がっていて、唯でさえ憂鬱な気分が更に落ち込んだような気がした。 彼女の瞳にはいつだって 【 画:NEO HIMEISM/題:赤橙 】 2008.04.12 |