あぁ、忌々しい。
敵意があるとしか感じられないそれは、ジリジリ、あたしを焼け焦がす。
融けてしまえるのなら、それでよかった。
けれどこれでは、ただ、真っ黒の塊になるだけだ。




「忌々しい」
「また言ってんの?」
「…」




まるで、この男のようで。




「ちょ、ちょっと、ちょっと、何シカトしてんすか」
「うっぜぇー…」



係わり合う前に立ち去ろうとすれば、腕を引いて、止められる。
睨めつけても、何処吹く風。吐き捨てるように零しても、にんまり笑って終い、だ。




「せっかく上ってきたんすから、はい、ここ。座ってくださいよ」




腕を放して、ここ、と指したのは、彼の座ったその隣。
勿論座る気は無いし、まして、




「勝手に上ってきたあんたに付き合う義務も義理も無い」




不動のままにそう告げれば、喉の奥を、くつくつと鳴らした男は当たり前のように弁当を広げた。




「一階からここまで結構体力も時間も使うのになぁ」
「だから、それはあんたの勝手。節約したいなら教室で食べてれば?」



そうしてくれれば、あたしの昼休みも平和に過ごせるというものだ。




「ほーんと、さんって可愛くねーっすよね」




至極可笑しそうに言って、玉子焼きを頬張る。
いらいら、する。こいつとの会話は。
一言一言、喋るたびに、大切だったもの全てが、抜け落ちて言ってしまってるような…



「あんたには言われたくない」



逃したのは、立ち去るタイミング、だけだろうか。
もしかしたら、あたしはもうすでに、とりかえしのつかないほど真っ黒なのかもしれない。
だって、現に、ジリジリ、刺すような熱は、外からなのか、内側からなのかも、もうわからなくなってるんだ。






光を消してしまう星





( 題:赤橙 / 画:Sky Ruins
2008.05.01