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「あれ、湯舟?」 「へ?」 「おわ~、ひさしぶり!」 ぱぁっと笑って、駆け寄ってきたのは、たしかあれは桜華女子の制服、を、着た勿論、女の子で。 見たことある、気はする。けど、思い返してみても、記憶の何処にも彼女の姿は見当たらない。正直、ちょっと可愛いというのに、まさか忘れるわけはない、と、思うん、だけど… 「だ、だれ、だっけ?」 正直に聞いてみたなら、目の前の子は口をぽかんとあけて、一時停止状態。 「な、ひっどい! 元クラスメートを忘れる、普通!」 突然動き出した目の前の彼女は、キンと、声を響かせて、それから諦めたように溜息を吐く。 「中学の同級。井口よ、井口愛美」 「え…な、井口!?」 その改めての自己紹介に、今度は俺が声を上げる番だった。 エ ス パ ー帰り道が同じ方向らしく、自然と隣並んで歩くことになった。 見覚えの無い彼女は、言われて見ればたしかに、中学のときの友人の面影みたいなものがのこっているような気もする。 「あーあ、傷ついた、傷ついたなー…」 「だ、わ、悪かったっ、て、」 何度も謝っているというのに、これ見よがしのジト目と台詞をやめようとしないところは、全くかわってない。 てゆーか、 「井口が、化粧なんかしてんからじゃんか!」 そうだ。あの頃はしてなかったのに、何で化粧なんかしてるんだよ。 「なによー、あたしはすぐわかったのに」 「俺は化粧してねーし!」 「してたら怖いし!」 そういう意味じゃねー! 互いに睨み合って、気づく。 そうか、あの頃より髪も伸びてるし、背はなんか俺が伸びたせいかちっさくなってるみたいに感じて…それに、なんか良い匂いが… 「なに?」 「うぇ!? なん、何も別に! なんでもねぇって!」 「ふーん…?」 明らかに不審がった声で、疑惑の視線を向けられて、堪えきれなくなって、歩くスピードを上げれば、隣を歩いていた人は半歩後ろを歩くことになって、それでも、それ以上距離が開くことはなかった。 なんとなく、声をかけずらくなって、それから、無言。 マズったなと思ったけれど、今さらすぎる。 「えと、それじゃ、あたしこっちだから」 「あ、ん、おう、じゃあ、」 「うん、ばいばい」 手をふる相手にふり返す。 これ、止めるべきなんじゃねぇ? ケータイ、番号ぐらい、聞いとくべきなんじゃねぇ? もう会えねえかもしんねーじゃん。 声かけなきゃ、声、かけなきゃ… どんどん小さくなる背中をみつめる、もしかしたら、振り返るかも、なんて、振り向けばいいのに、なんて思っていたのに、タイミング良く、カンカン、踏み切りが下がって、喧しい音を鳴らして電車が、通り過ぎる。見送ることすら、邪魔をして。 こんなだから、ビビリーキングとか言われんだって…、 「くそ…」しゃがみこんでみても何もかわらない。 目をつむれば、ぱぁっと笑って、駆け寄ってきた井口が浮んで、 超能力者でもなし、思ってるだけじゃ、伝わるわけねーだろ! ばかみてぇだ… 目を開ければ、電車はとうに通り過ぎていて、彼女は後姿すらみあたらなかった。 ばっかみてぇだ… 「にゃ~…」 「何で猫…?」 「っ!?」 背後からの声に振り返る。 しゃがんだまま見上げれば、息を切らした、井口がそこにいて。 「で、何してんの?」 隣にしゃがんで、首をかしげた。 おまえ、それやばい。パンツ見えるから…! 「それは! …俺の台詞じゃねえ?」 慌てて立ち上がれば、続いて彼女も立ち上がる。 あれ、もしかして、勿体無いことした…? いやいやいや、それはさすがに… 「ああ、ケータイ、聞きわすれたから」 「あ、お、っていうか、何で後ろから」 たしかに、あの踏み切りの向こうに消えていったはずなのに。 電車が隠すまで見つめてたんだから間違いは無いのに、どうして、背後にいたのか。一体全体何の手品だ。 「あそこの踏み切り長いからさ。湯舟帰っちゃうだろうと思って、あっからね」 「走ってきたの?」 指差す先には、地下歩道。ああ、そうか。だから、息、あがってたのか。 「だって、コレ逃すともう一生あわないかもでしょ?」 「一生って…」 でも、ありえないことじゃなった。俺だって同じこと思ったし、本当は俺だって追いかけたかったし、っていうか電車が来なかったら絶対引き止めてたんだけど、てか今、言えばいいんだろ、 俺も聞きたかったんだって、 戻ってきてくれてうれしいって、 あえてよかったって、 「あえてよかった」 言ったのは、井口で、俺はただ、驚くだけで。 ぱぁっと笑う彼女はもしかしたら、俺と違って超能力者なのかもしれないと思った。 2008.05.05 【 画:MICROBIZ / ♪シュノーケル】
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