「ん…あ?」




 ぼやけた視界が徐々にクリアになる。  夢の中から、鳴り続けていたリズミカルな音に気付いて、原因を探るように辺りを見回した。



「あ…おはよう」
「お、う…?」
「ふふ、寝ぼけてる?」
「………」




 目の前で笑っているのはさん…





「え、さん?」

「はい」





 「やっぱり寝ぼけてた」なんてくすくす笑う。
 間違いなくさんだ。
 さりげなく再度あたりを見渡してみたけれど、きちんと自分の部屋だった。
  よかった…
 って、え? ちょっと、待てって。
 ちゃんと考えろよ、オレ。
 そもそも、おまえ、いつ眠った? 





「やべー…」
「うん?」





 俺の記憶ではテスト勉強してたことしか思い出せねぇんだけど…





「俺、呼んだ? もしかして…」
「へ? 名前? 寝言で?」
「や、じゃなくて、さんのこと、ここに呼んだのかなーって」
「ああ、違う違う。太陽くんからね、ご飯要請がきたからつくりに」





 指差された先、台所にはまだ途中なんだろうそれらしい用意が。

 心地良い程のあのリズムは、あれだったのか、と、まな板の上の包丁に納得する。





「って、そのバカ中は何処いったんスか?」
「ああ、ちょっと、にんじん無かったから。買いに行ってもらってます」





 そういや、昨日あいつもいた気がするなぁ…オレよりバカと一緒に勉強したところではかどることは無いけれど、「監督命令だから仕方が無い」と向うから押し掛けてきたのだから仕方が無い。  そのバカが現在一人でおつかいに出かけているという。「めずらしいな」思わず零した言葉の答えは、「作るよりはいいらしいよ」、困ったように笑った人の声(なるほど)





「俺も、なんか手伝う?」
「え! いいよ〜、悪いし」
「や、俺、作ってもらってるほうだし」
「あ…そうでした」





 恥ずかしそうに笑って、少し考えるように、辺りをキョロキョロと見回す。





「じゃあ…お皿出しといてもらえる?」
「了解…カレー?」
「あ、シチューだよ。カレーのほうがよかった?」
「いんや、シチューのが好き」
「よかった! 迷ったんだよね、どっちにしようか」





 答えた俺に心底ほっとしたような表情を見せて、また笑う。





「好きだから」
「ふふ、それはよかった」
「じゃなくて…」
「ん?」
「シチューも好きだけど…」
「え…?」
「あー…俺さ、ア


ー! にんじん買ってきた〜!』





 ガチャッと尊大な音を鳴らして、おつかいに出ていたやつが帰ってくる。





「あ、太陽くん、ありがとう」




 パタパタと、玄関へと向かうさん。
  俺、結構勇気振り絞ったんですけど…
 労いの言葉をかけているさんの声を遠くに溜息が漏れた。


寒い日にはシチューを食べよう
     (俺さ、アンタのことが好きだから

「あ、赤星起きてたのかよ」

「…お前、まじ一回死ねよ」

「な、なん、いきなりなんだよ!」

「はいはい、ケンカしたらご飯無しだからね?」