「何の冗談…?」




 真面目に可笑しなヤツが目の前にいる。
 頭をどっかにぶつけたのかもしれない、比喩とか冗談じゃなく、真剣にその可能性を考えなければならない。
 なぜならすばらしく仏頂面した男の手には、赤い薔薇の花束が握られており、あまつさえ私へと向けられているのだ。




「うっせーよ、はやく受け取れって!」
「ええー…」
「いいから!」




 押し付けられるように渡されて、思わず受け取る。
  どういうこと? 何がどうなって、こんな可笑しな状況が出来上がったわけ?
 愛の告白や、プロポーズにしては、些か雰囲気がかけ離れすぎている。
 だって、コイツは、緊張している顔ならまだしも、明らかに、機嫌の悪い顔をしているのだ。




「…説明は無いわけ?」
「…」




 問いかければ、口を真一文字に結んだ男は、しばらく目を瞑って、開いた。




「誕 生 日 お め で と う ご ざ い ま す !」
「 は? え、あ、ああー、ありがとうございます…?」



 たしかに。今日は私の誕生日だ。でも、それってそんな凄んで言うこと?
 あ、ってことはもしかして、コレはお祝いにくれたのだろうか。
 でも、何故薔薇の花束? 欲しいといった覚えもなければ、柴田が選ぶ種類のものとも思えない。
 疑問が残って、はて、と首を傾けていたなら、「」名前を呼ばれて、送り主の顔を見る。




  チロリローン




「は?」




 コチラに向けられているケータイから、聞き覚えの、あるような、無いような音。
 それ、今、写メとりました?




「証拠にとってくるように、言われたんだよ」
「はぁ?」
「ソレ、江夏からな」
「江夏くんから!?」




 ああー、でもまぁ、それなら、まだ、なんとか。少なくともこいつよりは、花束が似合いそうではある。でも彼もプレゼントに薔薇の花束、なんて到底選びそうには見えないのだけれど。




「こっちは、淡口と中畑、二人から」




 そう言って、紙袋からこれでもかというほど、可愛らしくラッピングされたプレゼントを取り出した。
 これまた、ものすごく似合っていない。こいつにも、勿論あの二人にも。「ありがとう」受け取ったなら、誕生日のプレゼントなんて買いそうも無い男が「俺からは」と紙袋を適当に畳みながら口を開く。




「もってきてやったことがプレゼントな、ありがたく思え」




 ああ、なるほど。もしかして、彼からのプレゼントもあるのかと、驚いたけれど、そういうことならむしろ、納得だ。




「けちくさいわねー、まぁ、極貧だからしょうがないか」




 笑って軽口を叩いたなら、目の前の男は「ばっか、おまえ、」大いに納得いかないらしい声をあげた。




「それ持って歩くの、どんだけ恥ずかしかったと思ってんだよ!」
「ああー。全然似合ってないもんね」
「それはそうなんだけど…。お前、もっと他に言うことあんだろ」




 ぺしり、と、大雑把にたたまれた紙袋が頭の上に振り下ろされる。痛いわけは無いそれに、つい、「いたい」と口にしたなら、口が悪いのが仕様な彼からは、「ひよわ」と一言いただいた。






















「あいつら、わざとこんなんばっか選びやがって!」
「あんたがこれもって歩くって、ほとんどバツゲームだもんね」
「持ってきてやったのにお前…!」





【pict:ルルルレコード / title:赤橙】


Happy Birthday Yuzu