昇降口から木が豪快に揺れているのを見て、これは寒そうだ、と思いながら靴を履く。 出ないわけにもいかないと、そこから一歩踏み出すしたなら、きついだけではない、冷たい風が、まるで攻撃でも仕掛けるかのごとく突撃してきて、思わず二人して立ち止まった。 「っさっみぃ!」 「すぎる…!」 コートの前を合わせて、首を縮める。手袋なんて持っていないので、手はポケットの中、自然と背中がまるくなる。二人して同じような格好をしていることに気付いて、互い目を合わせて苦く笑った。 ぐぐ、と丸まった背中を伸ばして、若菜が空を見上げる。 「ありえねー…このままだと、クリスマスには雪降るんじゃねーの…」 今まさに降ってくるものがあるかのように視線を向ける人に、は一も二もなくすっぱりと切り捨てた。 「降るわけないじゃん、毎年クリスマスはまだ雪の時期じゃないし。しかも唯でさえ温暖化なんだし都合よくホワイトクリスマスなんてならないわよ。」 「おまえ、ほんと可愛いげねぇな…」 空を映していた瞳が、を映す。眇められた瞳に、は呆れているかのように、大きく息を吐いた。 「そういう若菜くんは、意外と乙女ねぇ…」 「なっ!?」 あらん限りに驚いた若菜の態度に、は小さく笑う。態とでは無かった。そこまで良い反応が返ってくるとは思ってもみなかったからだ。 なんともいえない表情をした若菜に、はポケットの中から白く細い手を取り出した。 「はい。」 自身から何かを受け取るような仕草に、若菜は片眉を上げた。 「せっかく風が手伝ってくれてるんだから、手くらいつないでくれたっていいでしょ?」 笑うに、若菜は少し戸惑うように、瞳を右へ左へと動かし、寒そうな其の手を少し乱暴に掴んだ。 無言で繋いだ手は、とても冷たく、けれど直ぐに、どちらが暖かいのか、わからなくなる。 「つーか、出してるほうが、寒いだろ。」 「やっぱり、若菜って馬鹿ねぇ…」 が、呆れたと笑って、繋いだ手を引っ張る。繋がったままのそれは彼女のコートのポケットへとおさまった。 「ほら、あったかい。」 若菜を瞳に映して、が微笑う。それが、悪戯が成功した子供のように見えて、若菜は少しだけ驚いた表情をつくった。けれどそれは、瞬きの間に彼女と同じような笑顔に変わる。 「普通、逆だっつーの!」 笑って引いた手が、今度は違うポケットへとひき入れられる。 「なんか、若菜のポケットのが余裕あるね。」 「そりゃ、男用だからじゃねーの。」 「そういうもん?」 「の手ちっちぇーしな。」 「若菜の手が大きいんでしょ。」 「だからそういうことだろ。」 「ああ、そういうことか。」 ぎゅう、と大きさを確かめあうように繋いだ手をどちらからとも無く握り締める。ポケットの中は、じんわりと暖かくて、これは離れがたいなと、互いに同じようなことを考えたけれど、二人とも声に出すことはなかった。
君が寒いと言うので、
2009.12.14 title by 赤橙(それなら手を繋ぎましょうか) |