冷たい風にマフラーを巻きなおす。暗くなったら更に寒くなることを思えば、今がテスト期間中でよかったかもしれないと、まだ明るい空を見上げた。テスト期間中、つまりは短縮授業で、今日はいつもよりも下校時刻が早かった。早く家に帰ってテスト勉強をしなさい、という意味で設けられたのだろうその時間の余裕をテスト勉強なんていうものに使用するつもりは更々無い。何を買うというつもりも無いけれど、本屋にでも寄ってみようか、もしかしたら、唯一買っているマンガがそろそろ出ているかもしれない、と考えていたときだった。


ちゃん!」


 聞き覚えのある声に自身の名前を呼ばれて、くるり、と後ろを振り返る。想像した通りのクラスメイトを見つけて、立ち止まった。


「今から帰んの?」


 首を傾げるクラスメイトに、こくりとうなずく。


「うん、そうだよ! セッキーも?」


 私しか呼ばないそのあだ名にはお互い慣れていた。セッキーも最初こそ少し戸惑っていたような気はするけれど、今は一切気にした様子はない。みんなにもそう呼ぼうと何度か提案したけれど、今のところ三連敗中だ。けどあきらめずに呼び続ければきっといつかはみんなに伝染すると思う。ので、この呼び方をやめるつもりは無い。実際、みんなが彼をセッキーと呼んだからといって何がどうこうなるわけでもないけれど、断られれば断られるほど、やってやりたくなるのが人の情というものなのだ、たぶん。


「じゃあ、途中まで一緒に…」
「あ! あたし本屋寄るつもりだから、方向逆なんだー…」


 セッキーの言葉にそう返せば、彼はきょとん、とひとつ瞬きをした。


「明日テストなのに、本屋なんて行っていーの?」
「え、だって、どうせ早く家帰ったって、なかなか勉強しないじゃん?」


 どっちにしろ一緒だって、と言えば、セッキーは、それもそうだ、と笑う。


「セッキーはまっすぐ帰るの?」
「ん、や…いや、そういや俺も本屋行きたかったんだよね」
「そうなんだ! じゃあ一緒に行こう!」


 同士を見つけてなんとなく嬉しくなる。寒い中を一人で歩くよりは、二人で歩いたほうが、気だってまぎれるというものだ。


「セッキーは何買うの?」
「あー、いや…えっと、タイトル…が、思い出せねーんだよね」
「ああ、そういうことってあるよね、あたしもこの前…」


 アレを思い出せなかった、こんなことがあった、と忘れ癖の言い合いになり最終は昨日の夜ご飯も思い出せないよねーと、互いにあきれた結論に行き当たる間に、すぐに本屋へたどり着いた。本を買った後もいろいろ話し込んだせいで、結局は普段の下校時間よりも遅い帰宅になったというのは、もう既に毎度のことだった。


2010.02.02