「それ、上手いね」




 彼女が笑う、視線の先。
 輪ゴムが、くるくる、俺の人差指を回って、とまった。




「よくしてるよね」
「ん、うん、そうかも」




 無意識だったのだけれど、いわれて見れば、よくしているような気もする。




「クセ?」
「なんだろうね、たぶん」




 苦笑して返せば、はくすくすと、可笑しそうに笑う。




「私のほうが知ってるって、なんだかおかしいよね」
「自分のことのほうが、人間案外知らないもんだよ、きっと」




 例えば、俺の気持ちが誰に向いているかなんて。本人である彼女が少しも気付いていないように。




「ふふ。そうかも」




 小指に輪ゴムをひっかけて、くるり、と回す。ピィンと、空に向かって放ったなら、重力に負けた輪ゴムは、ぽとり、と机の上へ落ちた。
 例えばこの、やさしく隠してくれる、夜のような世界に、僕らの望む未来はそれぞれに違っていて、だけどそれは当たり前のことで。
 だから、少しでも、長く、君と一緒に笑っていられる様に照らし出す星は、こうして銃で撃ち落すのだ。




星に輪ゴムを  
輪ゴムの銃じゃ、とどきすらしないことも本当は知っていて



「そういえばその輪ゴムって、どうしてあるの?」
「なんか、平っちがくれるんだよね。集めてるだろーって」
「え、集めてるの?」
「いや、集めてないんだけどね」
「(なのに律儀に置いてあるんだ)」


(pict:encore ♪:GOMES THE HITMAN)
2009.01.18