信じてんの、神とか ぼそぼそと聞き取りにくい声で言う人の視線はといえば、あたしの左手首に注がれている。 と、言うと何か、誤解を招きそうだから、正確に言うと、左手首についている数珠、に、だ。 「これですか」 上のほうに来ていたそれを掌のほうへと寄せれば、電球の光を反射して、一瞬だけ目に痛い白を飛ばす。 「いいことあった? それつけて」 「そうですねぇ…これ買って五日としない間に、父親倒れましたけどね」 「…ダメじゃん」 呆れた声を出すマサさんには、苦笑を返して、お店の人の話しでは、続ける。 「なんか、信じてる人にはきくし、信じてない人には全然らしいですよ」 「…信じてなかったから親父さん倒れたって?」 「うーん…『倒れたけど命が助かったのは石のお陰!』と思う人には効いてるし、『石買ったのに父親倒れたじゃない!』って思う人には効いてないんでしょう」 別名、気の持ち用だ。ちなみにそれは『シアワセ』になるコツ、でもある。 「詐欺くさ…」 「はは!」 確かに。そう、これは自分に対しての詐欺行為だ。どれだけ自分を上手く騙せるかに、自分のシアワセは掛かっている! だけど、うちは殆どの人がそんなかんじで人生を送ってきてるんじゃなかろうかと思ったりもしているのだ。違うよっていうその人の言葉なんか信用してないから。 「幸せ見つける為の一種の道具なんですよ?」 「あー?」 「触って思い直すんです、これだけで済んで良かった、まだやり直せる、生きてける」 つまり、独りを認められない人間の、寄り所なんですよ、神様って。とは、流石に口にはしない。 出会ったことがない人間のほうが、出会わない人間のほうが、確実に多いから気付けないってだけで、純粋に唯一な人もいるかも知れないし。 「…べつになくてもいいんじゃねーの?」 ソレ、と指さされた神様と繋がる為のもの。なんて罰当たりな! なんつって。 「まぁ…忘れた時のきっかけとしては良いですよ」 渋い顔をしている人を見れば納得いっていないというのが明白で。 「まぁ、マサさんにはいらないもんだってことっすね」 「おまえにもいらないだろ」 食い下がる。うーん…意外と、折れない人だ。 まぁ、あたしはシアワセな子ですしねぇ。 ちなみに、おもしろい子で、テンション高い子で、いい子ですから、もっかい主張しときますけど、い い 子 ですから! こんなもんいらないですよねぇ。まぁ、買うときも友人と店の人に流される感じで購入したわけだし。 「つーか、これ、金運アップの効果もあるんですよね」 「あぁ…」 「ちょ、何すか、その納得したような声は…」 「やっぱ、はだよな」 「あっはっは、馬鹿にされてる気がするんすけどねぇ…」 ( 題:hazy / 写:意識 ) 2007.02.15 |