「直道!」




 ガンッ、とデカい音と同時に、不機嫌な顔の女がオレの名前を呼ぶ。
 ドアの方に視線をやったなら、体勢からいっても明らか、足で開けよったらしい(人の部屋のドアに何しとんねん)両手には、目一杯のプレゼントを掴んだがいわゆる、メンチ、を切っていた。




「てか、ドアは手ぇで開けろや…」
「誰のせぇや思てんねん!」




 今日の日付、オレの誕生日に、プレゼントを持ってココにきたのなら、そら、もちろん、そのプレゼントは俺へのものと考えるんが普通なわけで、でも、別に、せやって、ドアを足で開ける理由にはなってへん。



「袋入れるとか、一回置くとかできるやんけ」
「持ってきてもろただけありがたいと思わんかい!」



 ペイと投げつけられた、箱の一つ。受け取れば、むすっと、唇を尖らせた。



「それ、うちのオカンから」
「あー、おばちゃん。いっつもええのくれんねんな。ありがとう言うといて」
「そらあの人、めっちゃよう考えて選んでるしな…男の子可愛いてしゃーないみたいやし…」
「そら、3人続けて女やったらなぁ…俺んとこおばちゃんも姉ちゃんもめっちゃ好き、優しいし」
「そらあんたにはな…」




 はぁ〜、と長い溜息を吐いて、テーブルの上に分けて並べられた、プレゼント。




「ちなみに、これが、お姉らから。ええのん買えるしー言うて二人一緒に出したみたいよ」
「おー、ありがとう言うといてや」
「あんたが手紙でも出したほうがよっぽど喜ぶと思うけど…ほんで、こっちが、アッコやらもりもっちやら…みんな中にカードつけとるし、誰からかはそれでわかるから」
「ははは、あいつら律儀やなぁ…」



 一塊になった山を指差して上がった、中学んときの同級生の名前。覚えてもろてたんも、わざわざ、こうやってプレゼントまでくれんのも、なんか嬉しいような、照れくさい気分で笑う。俺だけ、サッカー推薦で他の学校きたから、お隣さんのに渡すように頼んだらしかった。



「ガッコからこんだけ持って帰ってくる身にもなってや」
「あーはいはい、悪かったて」
「もっと感謝しろや、あほ!」
「別に。アホでもサッカーできるし、オレはええねん」
「サッカー、ちゅうか、スポーツにも、ある程度頭必要やろ…」
「お前、考えながら空手しとるん?」
「練習んときに考えながらしとかな、試合んときできひんやん」




 意外と、ちゃんとしとるんやなぁ、と思う。
 そもそも、空手始める言うたときは、どうせ直ぐ飽きるやろうと思っていたのだ。こいつが続いとる習い事なんて、剣道意外になかったし。
 ちゅうか、格闘技系やったら続くんちゃうやろな、こいつ…




「ほな帰るし」
「あ? もう帰るんけ?」
「これ届けに来ただけやもん」
「ごくろうさんやな」
「うーわ、腹たつー」



 ホンマに思たから言うたのに、嫌味として捉えたらしい幼馴染は、笑顔を引き攣らせた。




「あー、ちゅうか、お前からは?」
「はぁ? あんた、持ってきてもろただけでも足らへんとか言う気か!」
「いや、それとこれとはまた別やろ。つか、お前がオレの分用意してへんとかありえへんやん」
「何、その自意識過剰!」



 自意識過剰…? え、そうなるん?
 驚いてるらしいに、オレも驚いた。




「せやかて、お前毎年くれるやん。今年だけわざわざ無かったら逆におかしいやんけ」
「…あんたなぁ、うちら、もう高校生やで? 男の子と女の子やで? 学校も違うんやで? 疎遠になってもおかしないやろ」
「わざわざプレゼントもってきといて、疎遠もクソもなぁ…」



 だいたい、未だ家族付き合いが続いているというのに、どうして疎遠になれるというのか。
 たしかに、小学校のトキやらと比べたら、部活が忙しくなったりして前よりは会わへんなったかもしれんけど、なんやかんやでよう顔合わせるのに、疎遠になろう、ちゅうほうが無理がある。




「あんたが、草津左なんか行くから悪いねん…」
「は…?」
「このサッカー少年めが!」
「ぅわ!」



 いきなり投げてよこされたプレゼント、多分それがからやろうというのはわかった。
 ぶつかるようなヘマはせんと、しっかり受け取ったけど、礼やら反論やらなにやら言う前に、盛大な音でドアは閉められる。
 出てくときまで、人の部屋のドアへの配慮が欠けとんなぁ…。




「ちゅうか、少年て…」




 さすがに、その呼び方はもう適応されへんのちゃうかと思うんやけど…
 手の中の包みを開く。ちゃんとはいっとったカードは、もうなんかこの状態では苦笑もんやと思た。







 スポーツタオルと一緒に重ねて入ってたカードにはそのメッセージと一緒に、サッカーボールのピンズが添えてある。
 さっき、"サッカー少年"を悪口かなんかみたいに部屋を出てったくせに…
 矛盾した行動に、可笑しくて、一人、部屋で笑った。

 お揃いやというピンズは、部活用のカバンにつけたけど、目にした秦荘先輩が、「お前、どんだけサッカー大スキっ子やねん…」呆れた顔をしたので、内側のポケットにつけなおすことにした。
 ごめん、みんな、これは裏切りちゃうんや…でもなんか恥ずかしい。



まぁあれや。好きなもんは好きなんやし、しゃーないって
(サッカーにしても、友達にしても、)


( title by : 赤橙 )
2008.05.20