ちゃんが好きなのはたぶん…沢村だろうって、わかってて。 ごめんな、それでも自分の気持ちを押し込めて、他の誰かに譲ってやる気は、ねぇんだ。 それがたとえ、君が想ってるやつだったとしても。 ちゃんのとこに寄ってく沢村を、ちゃんはただ見つめている。 普段と変らない表情が痛々しくて辛い。 けど、きっと俺なんかとは比べ物にならないくらい、ちゃんは辛いはずだ。 「ちゃん、ちょい相談したいことがあんだけど」 「へ?相談なら、あたしより…」 「たまには違う意見も聞きたいからさ、な?」 彼女の言葉を途中で遮る。渋る人の手をとって、その場から抜け出した。 助け出す、とか、そんな良い物じゃなくて。 だって、この空間を抜け出したところで、彼女は泣いたりしないのだ。 きっと。俺の前なんかでは、絶対に。 じゃあどうして連れ出したのかっていえば、それはただ、自身が、見せたくなかっただけだ。 これ以上、その瞳にあいつを映すのを止めてほしいっていう、ただの俺の我侭だった。 彼女が辛いのが哀しいわけじゃなくて、彼女がアイツを想っているのが、辛いのだ。 間違っても、正義の味方なんかに、なれるような人間ではないことは自分自身が一番わかっていて、なのに、 ありがとうございます ぽつり、落とされた小さな声。 違うんだ、なんて、どうしたって言えるはずもなくて、聴こえてないふりで、笑った。 (俺はどうしたって人間なんだ、ごめんな) |