「。これ食う?」 「サツマイモポッキー! わー、ありがとう!」 パッと笑った彼女に、沢村くんの表情が綻ぶ。 名指しするあたりが、彼らしいなぁと、思う。 何が如何って、考えたわけじゃないんだろう。 ただ、あげたいなって思ったのがだった。だから、彼女の名前を呼んだだけ。 それをすることによって、周りがどういう風に思うとか、そういうことまでを考えていない。 それが彼の良いところだ。周りの目じゃなくて、自分がしたいことを素直にできてしまう。 彼のそういうところを、あたしは好きになったのだ。 けど、やっぱり、ちょっとキツイなぁ… 見たくなんてないのに、聞きたくなんて無いのに、自然と、視線で追って、声を追って、彼の想いの向きを確認してしまう。 喉のあたりから、つま先へ、指の先へ、寒いときと似た感覚。冷えた血液がゆっくりと巡る。 あたしはいつから、こんなに自虐的になったんだろうか 「ちゃん、ちょい相談したいことがあんだけど」 「へ?」 突然飛び込んできた笑顔に、思わず間の抜けた声を出した。 相談、なんて、一年マネ野球初心者の私にしたところで、何の役にも立たないだろ。 「相談なら、あたしより…」 先輩たちのほうがいいのではないか、と、言い終わる前に、まぁまぁ、遮られる。 「たまには違う意見も聞きたいからさ、な?」 御幸先輩は言い聞かせるように笑って、あたしの返答を聞く前に、扉を開ける。 いつのまにか引かれていた手に従って、あたしも部室から出た。 とたんに、息がしやすくなって、自身驚く。 思ってる以上に、堪えてたのかな… 心の声が聴こえたかのように、引かれる手に伝わる力が強くなる。 御幸先輩は、振り向かない。 けど、繋がった部分の暖かさに、 ありがとう、ございます… 聞こえないだろうくらいの大きさにしかならなかったそれは、届かなかったのか、それとも、聞こえない振りをしてくれたのか。 「喉かわかねー? 何がいい?」 自販機の前で振り返っての笑顔は、太陽みたいだと、思った。 (だって、ほら、もう寒くない) |