その質問はいきなりだった。
ついさっきまで何を話していたかと、確認してしまうほどに、唐突すぎた。
記憶を辿り、やはり、その会話に繋がるとは思えないのだけれど、と、結論とは到底呼べない答えに行き着いたあたりで、元来、堪え性の無い相手は、痺れを切らして、再度同じ台詞を口にする。


「なんで、天地なわけ」


それは、やはり、そういう意味での、問いかけなのだろう。
何秒か前までしていた、Ken Yokoyamaのライブの話しはもういらないらしい。


「なんでって、言われてもねぇ…困るんですけどー」
「顔か」
「あれの顔のどこがいいって?」
「おま、それが一応でも惚れてる相手にそういうことか…?」
「あ、たしかにあんたよりゃマシだもんね」
「うっせー!」

安い挑発に、易々と乗って、「もういい、もうしらねー」と、明らかに拗ねた返事を返されては、くすくす、もれでるわらいを堪えることも難しい。


「なんかねぇ、まぁ、最初は、助けられたので、お礼しようと」
「はぁ?」
「いや、あんたのタチ悪いバージョンみたいの数人にからまれてたときに、助けられたのよ」
「タチ悪いバージョンってお前…」


そこまで言って、物言いた気に押し黙る。そこまで口にしちゃったら、言ったも同じだと、つっこんでやるのが彼のためなのだろうか、どうなのだろう。考えあぐねているうちに、彼の中では話しがすすんでしまったらしい。


「人助けなんか、するような奴に思えねぇけどな」
「ん、まぁ、なんかイライラしてたみたいだから、八つ当たりじゃない?」
「それわかってて、礼すんのかよ」
「助かったのは事実。借りなんかいらない」


言えば、何故か返ってきたのは溜息。その不快な返答をやってのけた男は、まるで何事もなかったかのように、続きを話し出すものだから、何か言ってやろうかとも思ったのだけれど、それではいつまでたっても、この男とするには些か居心地の悪い話題が終わらないままである。


「で、ちゃんは何してやったのよ」
「…別に、なんもしてない。お礼しにいったけど、なんか声かけずらかったし」


多少、不服な気持ちを持て余しながらも言えば、「それじゃあ、何処に惚れたっつーんだよ」クイズの解けない馬鹿みたく、イライラしだしたらしい男は、机を指でトントンやっている。
答えてやるのが、馬鹿らしくなって、さっさと結論だけを口にした


「寂しそうだったから」
「いるじゃねーか、まわりに沢山」
「それは、違うじゃん。なんつか、同等の仲間みたいのが、みあたんなくて、一緒にいれたらなって、思ったんだから、しょうがないでしょーが、馬鹿!」
「ってーな! 何で殴んだよ!」


 イライラしてるあんたに、イライラしたんですよ!
無言で睨むが、そんなものが、この男にきくわけがない。


「同情じゃねーの」
「…かもしんない」


そもそも、どっからどこまでが恋愛感情で、どっからどこまでが友情かなんてことすらあたしには区別がつくものじゃない。
だいたい、あたしは、あたし自身の口から、天地に惚れている、なんて言ったことは無い。
 お前の態度は、如何見てもあいつが好きな態度だろう、と、回りがそう言うから。きっとそうなのだろうとは、思うけれど。
自分っていうのは、自分では見れないし。唯一映し出せることのできる鏡は映す物が真実とは限らない。自分ではない他人のほうが、よくわかっているものだ。
これが恋だろうが、恋じゃなかろうが、ただ、


「一緒にいたかったんだよ」


それが、彼の為なのか、あたしの為なのかすら、わからなくなるほどに。



僕のしっているなかでいちばんこどくだった肩
(だったから、と言えば、似てたんじゃねーの、だって)





(title by : cloudy cloudy


2007.10.23