壁にかかったカレンダーには、赤いボールペンで書かれたハートのマーク。
とても小さくかかれたそれは、けれど、特に書き込みの無いカレンダーでは思いのほか目立つ。


 ほんまに、いつの間にかいたんや…


彼女が隠れてこそこそとやったんかと思うと、とてもいとおしくなる。
 かかんでも、二人の記念日なんやから忘れへんのにな
引き出しをあけて、取り出した小さい箱には、彼女のスキな赤色のリボンをつけた。
シルバーリング、なんて、ほんまやったら柄ちゃうやろーって、話なんかもしれんけど。でも、やっぱり、想いを伝えるのにはこれが一番いいと思ったから。
 当日までは、内緒やけど。

時計を見れば、家を出る予定をしていた時間がすぎていて、慌てて、引き出しの中に戻した俺の想い。
少し早歩きで、彼女と待ち合わせ場所へと向かう。

ちょうどの時間についたけれど、彼女の姿は見当たらへんかって、他にも待ち合わせをしているらしき人らの中にまじって壁へともたれた。
 きっと、驚くやろなぁ。ほんで、あと、絶対照れるわ。
その時を想像して、ニヤけそうな顔を必至で堪える。一週間もないその日付が待ち遠しい。

五分送れで、道路の向こう側走ってきたは、信号に引っかかって、俺に向かって小さく手を上げる。手を振り返せば、両手を合わせて、ゴメンナサイ、のポーズ。
 五分くらいええのに。
大体、いつも遅れるのは俺のほう。






「ごめんな、家でるときに電話きてしもて」






信号が変われば急いでかけてきて、まだととのいきっていない息をしながら弁解を。必至なのが可愛くて、走ったせいやろう、少し乱れてる髪を梳いた。






「べつにええって。むしろ、たまには俺も先におらしてえや」
「それは…もっと早めに待ち合わせにきたらええんちゃうの?」
「あいたー、それ言われたら痛いわー」






白い息で笑いあって、どちらからともなく、手をつなぐ。






「そのコートかわいいなぁ」
「ふふ、さすがハチさん! 作ったとこのやつやねん」
「マジで〜、あ、まさか! 俺用に!?」
「あはは、あほか! 今季用です」
「はは。えー、そうなん? 残念やわ〜。でも、よう似合てんな」





色とりどりのコートが行き交う中で、やっぱり、ぱっと目を引く。
が着とるから、ってだけちゃうくて、やっぱり、彼女の作るものは、彼女特有の味が出るのだ。






「…今日ハチに会うからと思って、おろすんまってたんやけどな」






ぽそっと言って、唇を尖らせる。それが照れているときの癖やってのは、出会って2年にもなれば、わからんはずがない。






「あーもー、おっ前、かわいいなぁ!」
「ハチくんも可愛いですよ」
「そこは、カッコイイって言っとこうや」
「…?つくっとるときはカッコええかもなー?」





にぃっと口角を上げて悪戯が成功したかのような笑顔。
ああ、そうです。僕はどうやったって、君には叶いませんとも。
やから、二人の記念日ぐらいは、絶対、驚かしてみせるからな!





「あれ…」
「どないしたん?」
「や…わ、ハチ、雪!
「へ…お、わ、ほんまや!」





今年初めての雪が降って、二人して大興奮。
回りの通行人からも、口々に 雪 って言葉が聞こえてくる。
空を見上げてたが、同じように余所見しとった女の子にぶつかりそうになって、あわてて、繋がったままの手を引いた。






「あぶないなぁ」
「ごめん」





言葉に似合わず嬉しそうに笑って、また空を向いた彼女。
懲りない彼女の手を、はぐれてしまわんように、さっきよりきつく握った。



♪サスケ 2008.05.06