忍っていうのはそもそもが、感情なんてものを持ってはいけない、なんていわれていて、失くす訓練なんてのもさせられたりなんかして。
 だから、彼女の表情があまり変わらないのだって、彼女が忍びであるが故だったりもするんだろう、けれど。笑ったら、絶対に、




「かわいいと思うんだよねぇ…」
「…上司に手を出すのは辞めた方がよろしいかと」
「は?」




 普段と変わらない表情で、お茶を啜る。
 彼女の視線の先には、旦那の姿。
 



「あー、さん? 今の、俺様に言った?」
「違いましたか? あまりにも熱心に真田様を見つめていると思ったら、先程の言葉でしたので、てっきりそういうご趣味なのかと…失礼しました」




 淡々と言うものだから、冗談なのか、本気なのか…。それすら、判断し難いのはいつものことだけれど。




「やめてよね〜。仮に男色だったって、旦那は御免だし」
「おや。そうですか。真田様はおかわいらしいと思いますけど」
「小さな子供のようで、でしょ、ソレ」
「どこかの青いのより、よほど可愛げがあってよろしいかと」




 どこかの青いのって…、龍の旦那のことなんだろうなぁ、やっぱり…




って、龍の旦那好きだよねぇ」
「…貴方にかかると、私には嫌いな人がいなくなる」
「そ? だって…」
「…なんですか」
「あー…やっぱいいや」




 だって、からわざわざ、個人の話題を振ることなんて、滅多に無いじゃないか。
 思っただけで口にしなかったのは、彼がどれだけ彼女の胸のうちを閉めているのかなんてのを、わざわざ、教えてやる気には無れなかったから。




「譲る気なんて、無いわけだし、ねぇ…」
「…独り言が多いのは危ないですよ」




 空になったらしい湯呑みを、ことり、盆の上に置いて、こちらを向いたのは、とても、冷たい視線。




「愛が足りなくて力が出ない…!」
「あはは、そのまま消えうせればよろしいですのに」




返って来たソレはこれまでに無いほどの笑顔でした…。





【 title:リライト/material:tbsf
2008.07.17